てんしがとぶ

登場キャラクター

成瀬:ライゼン・コルトナ(ネームドノットプレイヤーキャラクター)
Я 朝霧来夢さん:ソレイユさん(名前だけ)

※こちらの小説は暴力表現を含みます。十五歳以下の方は読むことをご遠慮ください


 一年という時間のくくりはわからないけれども、次の年、というものに切り替わる最後の日が「宇宙都市シャングリラ」の創設者であるソレイユの誕生日らしい。
 「宇宙都市シャングリラ」の住民は創設者の生誕を祝ぎ、感謝し、奉る。
「だから、ライゼンも、お祝いしない?」
「どうやってお祝いするんだ? ソレイユって人には会うこともできないのに」
 居住区のベンチに座り、ミントブルーの髪を揺らしながら、ライゼンは最近になって話すようになった天使型の住人、コルトナに言葉を返した。
 コルトナは煉瓦の髪を風に揺らし、首を横に傾ける。顔には変わらず薄い笑みが能面のように浮かんでいる。本当に笑いたくて笑っているのかがわからない。だけれども、ライゼンにはその笑顔を止めさせる権利などない。
 煉瓦色の髪と小豆色の瞳、そして若葉色の瞳孔が目立つ外見のコルトナは、「宇宙都市シャングリラ」の天使型の住民としては珍しく、羽を隠さずに広げていた。ライゼンがコルトナに「羽があるとぶつかったりして不便ではないのか」と尋ねた時も。言葉による答えはなく、柔らかく微笑まれるだけだった。
「ソレイユ様は、祝福という行為がお嫌いだから。それよりも、ボクたちが、幸福であることを望まれる。だから、まあ、ライゼンもボクと楽しいことをしてくれる?」
 コルトナの喋り方はゆっくりとしていてたどたどしい。ライゼンが途中から早口になっていくのとは正反対だ。
 ライゼンは空を見上げる。青い。かつていた世界では見ることの叶わなかった、透明な青が広がっている。その空を見ていると、祝祭があるのならばそのための理由などどうでもよくなったので、ライゼンは決めた。
「いいよ」
 素っ気ない答えであっても、嬉しそうにコルトナは笑う。
 そして、コルトナはライゼンの手を取った。
「いこう」
 ライゼンはコルトナに手を引かれて、駆けだした。
 向かう先は、丘だ。

 大木が一本だけ葉の腕を広げている丘でライゼンとコルトナは遊んだ。戯れといった方が正確かもしれない。コルトナは天使型のみが使える異能によって、ライゼンを掌の上で転がしているだけだ。
 駆け回ることに疲れ、ライゼンは寝転がる。頬をかすめる草がくすぐったい。コルトナはライゼンの隣に座ったまま顔を覗き込んでくる。
「ねえ、ライゼン」
「ん?」
「ボクの、眷属にならない?」
 最初は言われた内容がわからなかった。ぱちぱちと目を瞬かせる。その間にもコルトナの指がライゼンの輪郭をたどっていく。
 コルトナの指は冷たくて、死者と言われても納得しそうだった。
「ライゼンは、ひとり。だれとも、つながって、いない。だから、かわいそうだから、ボクの眷属にしてしまいたい」
 言われた内容はもっともで、ライゼンには反論の一つも浮かばない。「宇宙都市シャングリラ」には多くの関係者と天使型がいて、彼や彼女らはつながりを持ってるけれども、ライゼンに親しい相手はいない。話はする。親切にしてもらう。
 それだけだ。
 ライゼンはいつまで経っても、ストレンジャーのままだ。だから、コルトナの傲慢な憐憫を受け取るに相応しい。コルトナも他の住民から一線を引かれているようだから、自分たちはお似合いだろう。
「ライゼン」
 いつも通りに淡々としているというのに、どこか縋るような響きがあったから、ライゼンは頷いた。
 コルトナの眷属になる。
 だけれども、ライゼンの答えを聞いて嬉しそうに笑ったコルトナの首が吹っ飛んでしまったために約束は結局叶わなくなってしまった。


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