登場キャラクター
成瀬:ライゼン
Я 朝霧来夢さん:翠さん・舞佳さん・リリィさん
ようやく顔見知りとも言える相手ができてきたので、ライゼンは大変ほっとしている。上を向いて空を眺め、左右を見渡して祭を楽しむ人たちを見る余裕が生まれたのだから。
宇宙都市シャングリラで現在開催されている「月光祭」では、天使型と関わる催しが多い。いまは亡き天使型の記憶に触れることが許され、また、天使型に贈り物をすることも叶う。
「と、いうことで」
ライゼンはどうにかこうにか祭の最中に見つけ出すことができた、翠、リリィ、舞佳に向かって籠を差し出した。麦色の籠の中にはバタースコッチを溢れるほどが詰めに、詰められ、詰まっている。そしてバタースコッチには、砂糖に水あめ、生クリームにバターなど、とろけた甘さと驚くべきカロリィが秘められている。
だけれど美味しいのだ。さくり、と前歯で砕けて口の中でほろほろ溶けていく茶色の塊は、不謹慎だがプロジェクトエヌ的なほどに魅惑的だった。
ずいっと差し出された籠を最初に手に取ってくれたのは舞佳だ。
「ありがとうございます」
いつもの控えめな様子だが、決して他人行儀ではない距離を持って籠を受け取ってくれた。リリィが舞佳の手にした籠の中を覗き込む。透明な青いフィルムに覆われたバタースコッチを手に取った。
「これは、おいしい予感がするね」
「俺の予感は外れないんだ」とまで胸を張って言われたら、期待に背くことはないかとライゼンはどきどきしてしまう。リリィはフィルムを剥がして、バタースコッチをさくりと咀嚼した。もしゅもしゅと食べ終える。
「うん、おいしい!」
「よかった!」
リリィの顔に合格の笑顔が浮かび、ライゼンも笑うことができた。
「二人も食べなよ」
「それでは」
「はい」
翠と舞佳も手を伸ばす。緑と桜色のフィルムのバタースコッチをそれぞれ手に取って、口に含んだ。二人の顔にも揃って喜色に染められる。
ライゼンは三人の様子に満足した。夏のプールの時に、三人が話しかけてくれたことが嬉しかったから、何かをして恩を返したかった。その折に「月光祭」のことを知ったので、良い機会だと、他の関係者と一緒にバタースコッチを作ることにした。渡すことまでできたのだから大成功だ。
ライゼンは籠から手を放して、二歩だけ三人から距離を取った。
「また、会えたらよろしくな!」
舞佳、翠、リリィの三人に背を向けて、ライゼンは走り去ろうとする。
