登場キャラクター
成瀬:ライゼン
尾津杏奈さん:アァトゥフさん・タァラクさん
被ったはよいが外れずにいたかぼちゃは無事に頭から離れ、ライゼンは良好な視界を取り戻した。
「ありがとーございました!」
砕かれたかぼちゃの破片を手に持って、タァラクは鷹揚な様子で首を横に振る。礼を言われるまでもないといった態度だが、タァラクとアァトゥフの協力がなければ、ライゼンだけこの宇宙都市で終わらないハロウィンを続けることになっていたはずだ。礼はいくら言っても言い足りない。ライゼンはもう一度「ありがとうございました」と頭を下げた。
「それにしても、どうして外れなくなったの」
玩具の包丁を掌にぺしぺしと当てながら、アァトゥフに当然の疑問を投げかけられる。ライゼンはへらりと笑って、頭をかいた。
「いや、他の子たちも被っていたから、俺の頭も入るかなって試したら。思っていたよりも小さくて」
アァトゥフとタァラクは一度、顔を見合わせたあとにライゼンを公園に連れていった。アァトゥフに手を引かれるまま、ライゼンは二人の後をついていく。公園に到着すると、広場の中心にある目盛りの付いた時計台に背中を押し当てられた。
タァラクは眺め、言う。
「ライゼン、君は背が伸びたのではないか」
「へ?」
「まだ十四歳でしょう。成長だってするわよ」
だから、かぼちゃの大きさと自身の身体の大きさを見誤って、かぼちゃが頭にはまってしまったのではないかという推論をアァトゥフは淡々と述べる。
「そうか、俺。大きくなったんだ」
他人事のようにつぶやくのは実感がわかないためだ。ライゼンの故郷では食糧難も起きていたため、与えられる食事は恵まれていたとはお世辞にも言い難い。だけれど、宇宙都市シャングリラは食料も娯楽も驚くくらいに豊富であるため、もう食事に困ることはなかった。体も本来の速度で成長しているのだろう。
これから、自分はさらに大きくなる。
ライゼンはタァラクを見上げた。縦と横のバランスが取れた、たくましい身体と顔立ちをしている。
「大きくなるとしても、タァラクさんほどはなれなさそうにないなあ」
「さらに大きくなり、力強い筋肉が欲しいというのならば。トレーニングをすればよい」
当たり前の言葉を返されて、ライゼンは頷くことしかできなかった。
